ヒッチハイク日本一周一人旅 - 旅路Good(たびログ) ADMIN
ヒッチハイクをメインとした旅の様子を、時にはリアルタイムで時には想い返して綴ったブログ。
『旅路Good』とは“旅”の“ブログ”=“たびログ”という音に、“良い旅路(たびじ)になるように”という意味をゴリ押しで当て字したもの。

(記事を探している人はもう少し下の方へ...)

ヒッチハイクで旅する自分だからできることが、きっとあるはず。
というわけで、チベットとウイグル(東トルキスタン)の人たちから託された国旗と共に、日本全国47都道府県をヒッチハイクで巡ったのが2008年。

なんでチベット&ウイグル?という人は - 【旅の概要と動機】

大阪をスタートし、明石大橋を越えて... >> 四国一周(+小豆島) >> 山陽 >> 九州一周(+屋久島)&沖縄(本島+離島) >> 山陰 >> 近畿 >> 中部 >> 関東 >> 東北と周り...ついに北海道は函館にゴールしました!

計384組の親切な人たちと一緒に歩んだ、138日間10,000kmにわたるヒッチハイクと野宿の旅の報告はこちらを - 【旅のまとめ】

日本一周の旅の序章でもある北海道一周記は - 【'07 北海道編】
本編の日本一周記はこちらから - 【'08 日本一周編】
(毎日眠い目を擦って書いていた日記を元に現在加筆中、写真も追加中)

ヒッチハイク中には時間が無くて書ききれなかった...けれど今も心に残る、様々な出会いや事件について週一更新を目標に現在不定期連載中です - 【旅のエピソード】

※ヒッチハイクで乗せてもらった人たちなどに「無事に達成できたら連絡してね」とたくさんの名詞等もらったんですが、残念なことに途中で遭った盗難により一部を失ってしまいました。
こちらから連絡できなくなっている人にはこの場を使ってお詫びします。本当にすみません。


【現在、旅やヒッチハイクに関する質問を受付中。また各種依頼などもこちらから



--.--.--
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2009.01.23
世界一イカツいパブへ(前編)
これはニュージーランドを旅していた時の話。

ニュージーランドは南半球、オーストラリアの東およそ2,000kmの位置にあり、面積は日本の約3/4程の自然豊かな島国だ。
北島、南島という2つの主要な島と、その他いくつもの島々から成っている。

北島北部にある同国最大の都市オークランド。
そこからさらに北西に伸びる、長い半島を先端に向かって進んでいた。

しばらく北に行ったところで子供連れのおばさんの車に乗せてもらった。
褐色の肌に丸い鼻、そして骨太の体型。18世紀にイギリスを始めとするヨーロッパからの入植者たちが来る以前よりこの地の住人である先住民族マオリ族の特徴だ。

おばさんはとてもフレンドリーな人で「急いでなければお茶を飲みにおいで」と言って家に招いてくれた。
おばさんの家へ行く道すがら、見かけるのはマオリの人ばかり。
どうやらこの辺りは白人はあまり住んでいないようだ。

家に着くと家族を紹介され、皆と一緒にティータイム。
どこから来て何の為に旅しているのかなど、興味深そうに尋ねる子供たちと短いけれど楽しいひと時を過ごす。

お礼を言っておばさんの家を後にし、次の車を待っていると、すぐに今度は2人組みの男性が停まってくれた。
車内で話すうちに彼らは親子だということがわかったが、雰囲気はツレっぽかったし、最初は歳もそんなに違わないのかと思っていた。
普段、童顔な日本人ばかり見慣れていると、外人さんは基本的に実年齢よりも少し、時にはかなり年上に見える。

そんな実例を1つ。

これは南米にいた時の出来事なんだけど、その時自分はメールをチェックしたくてネットカフェに来ていた。
順番待ちの最中、時刻が知りたくなって隣に座っていた立派な鏡餅のような体型の人に尋ねてみた。
太い手首に巻かれた時計を指差して快く教えてくれた彼に、「Gracias señor.(グラシアス セニョール)」と感謝の気持ちを伝える。

グラシアスは英語でいう“Thank you”で“ありがとう”の意味、“セニョール”は“ミスター”にあたる敬称だ。

一瞬、ほんの微かな変化だが、彼の表情が曇った気がした。

ん?
丁寧に礼を言ったはずなのに.....と考えるも思い当たる節は無い。
その時彼が咳をしなければ、そのまま気付かなかったかもしれない。

だが、彼は咳をした。
その身体に似合わない、小さな可愛らしい咳を。



そして自分はすべてを悟った。



彼の表情を曇らせたのは間違いなく自分のさっきの発言であり、間違っていたのはその認識と敬称。

真に付けるべき敬称は、
“セニョール”(=ミスター)ではなく“セニョリータ”(=ミス)だったということを。



そう、彼は彼ではなく、彼女だった。

その貫禄のある体型から何の疑いも無くおじさんだと思い込んでいたが、よくよく観察してみると確かに女性、それもまだ若い女の子だ。

せっかく時間を教えてくれた女の子をよりによっておっさん扱い。
本当に申し訳ない.....。





「今日はどこに泊まるんだ?」

回想シーンを展開していた頭に不意に親父さんの声が響いてきて、脳がニュージーランドでヒッチハイク中だったことを思い出す。

特に決まっていないと伝えると、親父さんは「じゃあ泊まっていけよ」と言ってくれた。

漁師である親父さんの家は海のそばの一軒家。
意外だったのはマオリである親父さんの奥さんが白人さんだったこと。

そして夕食に刺身が出てきたこと。
しかも山葵と箸まである。

聞けば親戚(?)に日本人と結婚した人がいるらしい。
なるほど、自分を歓迎してくれるのも日本人だからかもしれない。

刺身とさらにステーキまで焼いてくれて予想もしなかった豪勢な食事。
量もハンパなく、エネルギーは摂れる所で摂れるだけとる主義の自分でも食べきることができなかった。

でぶや(注 - 元祖!でぶや、テレビ東京系列)から3年契約のオファーが来そうなくらいの勢いでパンパンに張った腹をかかえ、用意してくれたベッドに潜り込む。

何でも明日はいろいろと案内してくれるらしい。
楽しみだ。



世界一イカツいパブで(後編)に続く...
[ヒッチハイク] エピソード | CM(2) | TB(0) | PAGETOP
2009.01.28
世界一イカツいパブへ(後編)
まだ読んでいない人は世界一イカツいパブで(前編)からどうぞ。



翌日。
朝から親父さんと息子と一緒に車で出発。

この日はまずケリケリという町にある、ニュージーランドに現存する中で最古の建築物=ケンプハウス(Kemp House)や、同じく最古の“石造りの”建築物=ストーンストア(The Stone Store)、そしてワイタンギにある国立保護区を見に行った。
ワイタンギという土地は1840年、当時盛んに武力衝突を繰り返していたイギリス側とマオリ側が後のNZ(ニュージーランド)の根幹となる条約を交わした場所で、ニュージーランドという国にとって最も意義深い場所といえる。

海沿いにあるワイタンギ条約記念公園。
空に向かって伸びるマストの先に、はためく3つの旗(マオリ、NZ、イギリス)を眺める。

今から160年以上昔、自分のいるこの場所で、マオリの部族長46人とイギリス総督との間に1つの国の行方を決める大きなやりとりがあったと思うと何だかちょっとロマンを感じる。



ロマンをビンビンに感じた後はとりあえず腹ごしらえってことで、親父さんの運転する車はつい先日“行列して新商品を買うと時給が貰えるハンバーガーショップ”として日本で物議を醸した世界的チェーン店Mドナルドのドライブスルーに吸い込まれる。
3人そろって車内でガッツキつつ、向かった先は一軒のパブだった。

時間はまだ真昼間だというのに店内はそれなりに賑やかで、親父さんたちが入っていくとお互い常連といった感じの男たちがジョッキを片手に次々と話しかけてくる。

さてやっと本題。
タイトルに世界一イカツいとあるけれど、今回出会ったのはそんじょそこらのイカツい人たちとはレベルが違う、次元が違う、そして特に覚悟が違う。そんな人たちだった。


ではここで、どれぐらいイカツいかを分かりやすく説明してみるので、自分が大切にしている愛車(tavichoの場合はチャリンコ)で颯爽とツーリングしているところをイメージしてもらいたい。
その時突然ドカンと接触してきた買い物袋満載のママチャリ。右手ハンドルにぶら下げている袋からは特売のネギがモリモリはみ出しているぐらい満載の設定だ。

見ると前カゴが凹んでいる。

愛車(チャリンコ)の大切なチャームポイントの切ないまでの変形具合に対し、そ知らぬ顔で過ぎ去ろうとする相手の肩を後ろから荒々しく掴む。

でも、振り返ったその相手がもしもこんな人だったら.....















こんな人だったら.....







これが彼らマオリのトラディショナル。
(写真は参考資料)
自分なら即反転して帰ります。



で、店内はこの写真のような人だらけ。
これは実際ものすごくイカツい。



このタトゥーは彼らマオリの風習の1つで、様々な意味のある紋様を身体だけではなく顔にもガッツリ刺青するのが特徴的だ。
それを知識として知ってはいたが、これだけ集まるとまさに圧巻。

骨太の体躯に分厚い筋肉。
K-1選手のマーク・ハントやレイ・セフォーみたいな体格で全身に刺青を背負った男たち。
マオリだからといって皆が皆顔にタトゥーを入れているわけではないし、親父さんたちも入れていない派なんだけど、この店はやけに顔タトゥー率が高い。女性すら見事な彫り物が入っていたりする。

そんな中に日本人の自分が一人。


もしもそれよりこっちの方が絶対世界一だよっていうイカツいパブ、バー等を知っている人がいたら、ぜひ写真を添えて連絡して下さい。いつか現地調査に行ってきます。





そんな見た目は超イカツい彼らだけれど、実はとってもフレンドリー。
気付いたら自分も自然と輪の中に混じっていた。

一緒に記念写真をお願いしようと思ったのに、カメラを忘れてきた自分が恨めしい。


2時間ほど飲んで店を後にする。
「いやー、なかなか楽しかった」と思っていると、車はまた違う店の前で止まった。
今度はスポーツバー。
どんどん飲めとビールを持ってきてくれるが、さっきの店で結構飲んできたので正直もうそんなに入らない。それでも2時間ほど一緒に飲んで、やっと車に戻ってきた。

時間的にはそろそろ晩ご飯。
暗くなってきた山道を走る車内で今日はいったい何だろうなんて思っているとどうやら到着。
しかし、車を降りて家の中に入ることは出来なかった。





なぜならそこは、またしても酒場。
それなのに親父さんと息子、まるでさっきまでのことなんか無かったかのように、無理な禁酒明けのアル中のような勢いで、ここでもまたガンガン飲みだした。
比べてこっちはさっきの店でもいっぱいいっぱいだったのに、これ以上飲んでも気持ち悪くなるだけ。吐かない様にするので精一杯だ。

しかし親父さんたち。気前がいいというか面倒見がいいというか、自分たちが流し込む合間にこちらにもどんどんビールを持ってきてくれようとする。
せっかく持ってきてくれたものをまったく飲まないわけにもいかず、かといってジョッキを空けてしまうと次のビールが...という八方塞がりの状況に、申し訳ないけれど隣にいた若者とひたすら話し込んでいるふりを決め込んでなんとかやり過ごす。

ここでも多分2時間ほど、やっとの思いで店を出たが.....
そう、夜はまだ終わってはいなかった。





結局この日は計5軒。
帰ったのは深夜日付が変わってからだったので、時間にして10時間以上は飲み続けたことになる。
にもかかわらず、親父さんたちのペースは最後まで落ちなかった

彼らマオリの、本当にイカツいところは刺青の入った顔でも剛健な肉体でもなく、その底無しとも思える酒豪っぷりだということに気付いた、そんな長い一日。
[ヒッチハイク] エピソード | CM(2) | TB(0) | PAGETOP
2009.02.03
橙、緑、赤、三色ボーダーのコンビニ前で
広島を訪れた時のこと。

その日はヒッチがものすごく不調で、いくら待っても誰も停まってくれない。
停まる気配すらない。

立ったり座ったり、親指を突き出してみたりしまったり、はにかんでみたニヤついてみたり。
色々とやってはみるものの、今日に限ってはもれなく空振りのようだ。



朝から始めてはや数時間。
大長編のドラえもんが2作ぐらいは見られそうな、貴重な時間が流れ去る。
毎日時間に追われながらもキッチリとした生活を送っている人からは罵倒されても仕方が無いような一見無意味な時間。
時刻はいつの間にか昼を過ぎ、切なさが満月の日の潮のように満ちてきたそんな頃。

道沿いのコンビニ前でヒッチハイクをしている自分に犬の散歩をしている主婦らしき人が話しかけてきた。
乗せてくれる車を待っていると答えると、ここよりはあっちの方がいいんじゃない?と地元情報的アドバイスをくれるが、この日の自分はなぜかこの場所にこだわった。
勝算とかそういうものよりも多分、今更移動するのが悔しかっただけだろう。
我ながらあまり賢い選択とはいえない。

それはともかく、この数時間目の前を通る人は皆スルーだったのでちょっとした会話でもなんだか嬉しい。
「頑張ってねー」といってくれた主婦を笑顔で見送り、腰を入れなおして更なる持久戦へと突入する。










.....そして一時間後。

まだそこにいた自分をちょっと可哀相な子的な目でチラ見しつつ、さっきの主婦が軽く会釈をして通り過ぎた。
何かちょっとでも声をかけてくるのなら「いや、慣れてるから大丈夫ですよ」なんて返しようもあるが、何も言ってないのに独り言を呟くわけにもいかない。この感じが一番微妙。

ちょうどあまり好きでもない子に、というか全然好きでもない子に何か最近妙に接近されていて、その子はもうほぼ完全に自分のことが好きだと分かっているんだけれど、でも告白もされてないのに振るわけにもいかない。
「ゴメン、俺他に好きな子いるんだよね」なんて言おうものならちょっと高めのテンションで、「は!?勘違いだし」とか言われるのは必至。
言うに言えない、でも伝えたいこの想い、そんな感じだ。


主婦と犬が去った後、再び心に切なさの大潮がじわじわと満ちつつあったそんな自分に後ろから声をかけてくる人物がいた。



振り向くとそこにいたのは、胸に大きく7のロゴが付いたブラウン&ピンクな制服のコンビニ店員さん。おそらくすぐ後ろの店の人だろう。
この位置が邪魔だったのかなと思いながらも返事をする。

だが、彼女の用件はそんな殺伐としたものではなかった。





「これ、良かったらどうぞ」

そう言って差し出されたのは一本のペットボトル。500mlのお茶だ。
...これを自分に?
しかも、よく見るとそのペットボトルにはレジで貼られるテープが付いている。
その意味するところはきっと、これは彼女がお金を払って持ってきた品物だっていうこと。

若さ溢れる外見から察するに、バイトの学生だろうか。
その彼女がわざわざ仕事中に自分のお金を使ってまで見知らぬ自分にお茶を持ってきてくれた。そのことに驚き、そして予想外の人の優しさに触れ、じんわりと心が温かくなる。

そして考えた。
日常の中で逆の立場だった場合。別に相手が旅人である必要は無い、自分は普段から見知らぬ他人に優しく出来ているだろうか?

リスペクトの念が湧く。

もちろん彼女はそんなたいしたことをしているつもりはないだろう。
でも、だからこそ素晴らしい。
有り難く受け取りお礼を言うと、「頑張って下さい」と言って彼女は小走りで店に戻っていった。


そして。

もらったお茶を少しずつ大切に飲みながらヒッチハイクしていると、ほどなく一台の車が停まってくれた。
知らずといい表情(かお)になっていたのかもしれない。

心の中でもう一度彼女に感謝して、停まってくれた車の助手席に乗り込む。
「どこから来たの?」
「へぇ、何でそんなことしてるの?」

いつもの会話と共に、幸運なヒッチハイカーを乗せた車はゆっくりと走り出した。
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2009.02.27
不思議体験シンクロニシティ(前編)
僕らの生きているこの世界には、たまに信じられない様な出来事がある。

元子役タレントの母親が娘の結婚に呼応するかのように熟女ヌード写真集を出版だとか、久しぶりにお笑い番組を見て、出演してた女芸人を「お、芸人にしてはまぁまぁ可愛いな」なんて思ってたら女どころか30代の立派なおっさんだったりとか、携帯の変換機能で“クオリティ”なんて一般的な単語が変換候補に出てこないくせに“銀魂”っていうジャンプ漫画のタイトルが一発変換だったりとか。

今「いい歳してまだジャンプなんて読んでるの?」って思われたかも知れないが、違うんです。
少しなんで聞いて欲しい。

コンビニって誰でも行くことありますよね?
まぁ自分の場合は特に買うものも無いんだけれど。

で、行くと決まって平積みしてあるのがジャンプを始めとする漫画雑誌。
どうだと言わんばかりに積んであるのを見ると、「どれ今週も紙の質でもチェックしてやるか」となるじゃないですか。
それでペラペラとページを捲っているうちに図らずも金色の脳細胞が内容を理解してしまう...という、そんないかんともしがたい切ない裏事情があるんです。

主に月曜日と木曜日に崇高なる義務感から紙質チェック業務の為にコンビニに寄るんだけれど、ページを捲る最中ごくたまに笑いのツボに入ってしまうことがある。
怪しい笑みを奥歯で噛み殺し、小刻みに肩を震わせている様子はどうしようもない程に不審かつ変態的なので、良い誤魔化し方を知っていたる人がいたら是非一報を。

ちなみに外国から見たら、日本では日常的に見られる“大人が漫画を読む”っていう行為がまず信じられないという。「ヘイ、ユー。いい大人が何をやってるんだ?」ってことらしい。
しかしあえて、漫画を読むいい歳した大人の立場に立って代弁してみるなら、思うに日本人が幼稚だというよりも海外には大人の鑑賞に堪える漫画作品が少ないということかもしれない。
銀魂は...まぁちょっと違う気もするが。


それはともかく、これから書く話もそんな信じられない様な話の1つ。

それは去年の夏の出来事。
奈良で予定していた友人との合流がタイミングが合わずにお流れとなり、南部の天川村を通って和歌山の高野山へと向かっていた。
途中星がよく見えるという道の駅のベンチで一泊しての翌日、ここからなら高野山に行く人も多いだろうしすぐにでも乗せてもらえるだろうというカレーの王子様甘口のような甘い甘い考えは見事に打ち砕かれつつあった。

道の駅の出入口に陣取ること数時間、時計を見れば時刻はもう10時過ぎ。早朝ヒッチハイクを始めた時には早く着き過ぎたらどうしようなんて思ってたのが嘘のよう。早く出発しないと今日中に高野山を見て回れないんじゃあないかと少し焦りを覚えていた。

そんな中での望みは前夜ふとしたきっかけで知り合った女性とそのグループ。
この道の駅にあるバンガローに泊まっていた彼女らが出てくればきっと乗せてくれるはずなんて思っていたのに一向に見かけない。
ひょっとしてもう出てしまったのか...いや、この位置にいて見落とす事は有りえない。
なんて自問自答している中、ついにその女性グループを発見。
良かった、やはりまだいてくれた。
向こうもこっちを見つけたらしく、車を停めて降りてきたのでさっそく昨日の女性に話を切り出してみる。
聞けば方角はバッチリ高野山方向。よし!と思った次の瞬間、続いて聞こえたのは「でも人数いっぱいだから乗せてあげられないんだよねー」という一気に奈落の底に誘うかのような一言。
せっかく方向が同じなのに、こういうのが一番切ない。

残念だけど仕方無い。と思っていたらデジカメで写真を撮りだした彼女。
まずはこちらをパチリと撮って、次に隣に立って友達にカメラを渡すとその友達がまたパチリ。

写真を撮るのはいいんだけれど、一言の断りも無いのはいただけない。
温厚の見本のような自分だからいいようなものの、相手が岩手の某覆面元議員だったら激高して胸倉を掴まれているところだ。
自分も乗せてもらった人の写真を撮らせてもらうことがよくあるが、必ず一言お願いした後、OKということであれば撮らせてもらうようにしている。
そもそも相手の承諾を得ないで写真を撮影するということは、戸棚に大切にしまわれていたどら焼きを、その正当なる持ち主であるネコ型ロボットの留守の間にぺロリと食べてしまうのに匹敵するぐらいに大変失礼な行為であり...なんてことを考えていたその時。

「よかったら乗っていく?」とデカいワンボックスに乗った男性が声をかけてくれた。
乗ってみると車内には多数の子供たち。何かのスポーツ関係だろうか?磯野カツオをリスペクトしたような頭をしている少年を見てそう思った。

特に高野山へ行くつもりではなかったらしいが、時間あるし面白そうだからという理由で走り出した車は、ドライバー氏のアバウトな方向感覚で山奥へと進んでいく。
途中からは細くて曲がりくねった未舗装の道がグネグネグネグネと続き、カーナビの画面を見てもひたすらウネった線が延びているだけになる。

最初は賑やかだった子供たちも一人また一人と無口になっていき、ついに後部の座席から一切の声が消えた頃、ついにある決定的な変化が起こった。

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2009.03.01
不思議体験シンクロニシティ(後編)
まだ読んでいない人は先に不思議体験シンクロニシティ(前編)へ。



「気持...ち悪い.....」

死して魔王に操られていたゾンビが勇者に止めを刺される。
再び死にゆく最後の刻に一瞬だけ心が戻り、何かを必死に伝えようとしている...例えるならそんな感じの声で、少年は自分が吐きそうなことを伝えた。

1人がそう告げると、堰を切ったように僕も俺もと声が上がる。
少年たち全員が吐きそうだという素晴らしい状況が判明したが、正面から対向車が来たらお手上げなぐらいの山道だから停まってゆっくり回復を待つというわけにもいかない。
もう少しのはずだから頑張れ的な根拠の薄い励ましを受け、少年たちと吐き気との一進一退の攻防が繰り広げられる中、車は蛇行した道を走り続ける。

果たして少年たちはこの恐るべき敵に打ち勝つことができるのか?
もしも吐き気が勝利するようなことになれば、その強烈なスメイルによって引き起こされた連鎖反応でこの車内は阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまう。

助手席の自分はドライバーの男性とこれまでの旅の話をしながらも、後部座席が気になって仕方が無い。
普段よりもはるかに長く感じられる一分一秒が過ぎていき、まだ着かないのかと思ったその時。

やっと通常の舗装道路との合流地点が見えてきた。
ほどなく車を停めることの出来るエリアに到達し、少年たちは全員外の空気を吸うためによろめきながらも降りていく。
本当に限界だったんだろう。一番年少らしき少年は特に苦しそうで、膝に手をついては脇にある溝に何度もリバースを繰り返していた。

少し先の民家で道を聞き、ついに高野山に到着。
自分に付き合わせたおかげで少年たちには悪いことをしたなと思ったが、とても爽やかにこれからの旅も頑張ってと応援してくれた彼らとドライバー氏に深く感謝。

強大な敵に打ち勝った誇り高き少年たち。

手を振って別れた後は、まず案内所へ行って情報収集。
得られた情報を基に奥の院へと向かう。

奥の院はこの高野山の地でもっとも神聖な場所であり、その御廟には西暦835年に即身仏となった弘法大師空海が今なお鎮座している。

トヨタ、日産、ソニーなどを始めとするたくさんの企業の墓が立ち並ぶエリアを抜けると、次に現れたのはこれも多数の武将や大名たちの墓だ。織田信長、豊臣秀吉、武田信玄、上杉謙信、伊達政宗、明智光秀、石田光成ほか、有名どころが勢ぞろい。戦国時代のオールスターと言っても過言ではない面々が並ぶ。これまでまったく知らなかったが、全国の戦国武将のなんと4割もの墓がここ高野山にあるという。

それらを抜けるといくつかの建物が見えてきた。
灯篭堂と呼ばれる建物は文字通り大小無数の灯篭が燈されておりとても厳かな雰囲気。
その裏手にある大師の御廟では、参拝に訪れた多くの人々が静かな祈りを捧げていた。


次に向かったのが大門方面。
ここが高野山の東端だとしたら西端にあたる場所だ。

大木が見下ろす長い参道を歩きながら、何とは無しにメールを打っていた。
しばらくして携帯のバイブが震えた。
返ってきたメールを見て、一瞬我が目を疑った。



その内容は奈良で合流できなかった友人が、今この瞬間に同じ高野山にいることを示していた。


それもちょうど大門方面から、こちらの奥の院の方向に向かって歩いているところだという。
もちろんあらかじめ落ち合う予定にはなっていない。

送ったメールは、奈良での合流が無理になってしまったのでまた今度飲もうといっただけのごくありきたりのもの。
自分は今日彼の仕事が休みなことすら知らなかったし、また和歌山県に行くことも伝えていない。
それなのに...

“シンクロニシティ”という言葉が脳裏に浮かんだ。
分析心理学の創始者ユングの提唱した概念で、日本語訳すると共時性。一見まったく関連性が無いように思える事象が偶然の(ような)一致をもって現れることらしいが、まさかそんな世界各地の最凶死刑囚たちが東京を目指して突如一斉に脱獄するようなことが自分の身に起こるとは。

いや、これまでにも小さなシンクロはいくつもあった気もするが、これだけハッキリしたものは珍しい。
多くの官僚や政治家たちの、国民が痛みを我慢するのは当然だけど我ら選ばれし者の天から与えられし既得権益だけは何があっても守り通すぞ!守り通すぞ!守り通すぞ!という潔いほど明確な姿勢や、「ボウヤ...出すモンさえ出してくれればスポンサーなんてのはどんな黒い業界でもいいんだぜ(ニヤリ)」という最近のTV局の方針並にハッキリしている。

ほどなく途中の店で土産物を物色中の友人と合流。
一緒に来ていたもう1人の友人も含め、しばらくぶりの再会を果たす。

旅には毎日新しい出会いがあるけれど、たまには見慣れた顔もいい。

それぞれの近況を始め、世界経済における深刻な不況の連鎖やカルツァ=クライン理論における対消滅の説明、そして我が家の隣の浪人生の部屋から夜な夜な聞こえる甲高い叫び声と発情期のオットセイのような呻き声、主に外国人男女のようだが――について熱く雄弁に、時には涼やかに語り合いたいところだったがあまり時間も無いので世界経済以降を泣く泣く省略。

「少し痩せたけど何だか精悍になったんじゃない?」
固い握手を交わして別れる時、友人の1人がそう言った。

そうだとしたら、それはきっといい旅をさせてもらっているからこそ。
旅の魅力、それは自分の変化を感じられることでもある。

[ヒッチハイク] エピソード | CM(0) | TB(0) | PAGETOP
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