2009.01.23
世界一イカツいパブへ(前編)
世界一イカツいパブへ(前編)
これはニュージーランドを旅していた時の話。
ニュージーランドは南半球、オーストラリアの東およそ2,000kmの位置にあり、面積は日本の約3/4程の自然豊かな島国だ。
北島、南島という2つの主要な島と、その他いくつもの島々から成っている。
北島北部にある同国最大の都市オークランド。
そこからさらに北西に伸びる、長い半島を先端に向かって進んでいた。
しばらく北に行ったところで子供連れのおばさんの車に乗せてもらった。
褐色の肌に丸い鼻、そして骨太の体型。18世紀にイギリスを始めとするヨーロッパからの入植者たちが来る以前よりこの地の住人である先住民族マオリ族の特徴だ。
おばさんはとてもフレンドリーな人で「急いでなければお茶を飲みにおいで」と言って家に招いてくれた。
おばさんの家へ行く道すがら、見かけるのはマオリの人ばかり。
どうやらこの辺りは白人はあまり住んでいないようだ。
家に着くと家族を紹介され、皆と一緒にティータイム。
どこから来て何の為に旅しているのかなど、興味深そうに尋ねる子供たちと短いけれど楽しいひと時を過ごす。
お礼を言っておばさんの家を後にし、次の車を待っていると、すぐに今度は2人組みの男性が停まってくれた。
車内で話すうちに彼らは親子だということがわかったが、雰囲気はツレっぽかったし、最初は歳もそんなに違わないのかと思っていた。
普段、童顔な日本人ばかり見慣れていると、外人さんは基本的に実年齢よりも少し、時にはかなり年上に見える。
そんな実例を1つ。
これは南米にいた時の出来事なんだけど、その時自分はメールをチェックしたくてネットカフェに来ていた。
順番待ちの最中、時刻が知りたくなって隣に座っていた立派な鏡餅のような体型の人に尋ねてみた。
太い手首に巻かれた時計を指差して快く教えてくれた彼に、「Gracias señor.(グラシアス セニョール)」と感謝の気持ちを伝える。
グラシアスは英語でいう“Thank you”で“ありがとう”の意味、“セニョール”は“ミスター”にあたる敬称だ。
一瞬、ほんの微かな変化だが、彼の表情が曇った気がした。
ん?
丁寧に礼を言ったはずなのに.....と考えるも思い当たる節は無い。
その時彼が咳をしなければ、そのまま気付かなかったかもしれない。
だが、彼は咳をした。
その身体に似合わない、小さな可愛らしい咳を。
そして自分はすべてを悟った。
彼の表情を曇らせたのは間違いなく自分のさっきの発言であり、間違っていたのはその認識と敬称。
真に付けるべき敬称は、
“セニョール”(=ミスター)ではなく“セニョリータ”(=ミス)だったということを。
そう、彼は彼ではなく、彼女だった。
その貫禄のある体型から何の疑いも無くおじさんだと思い込んでいたが、よくよく観察してみると確かに女性、それもまだ若い女の子だ。
せっかく時間を教えてくれた女の子をよりによっておっさん扱い。
本当に申し訳ない.....。
「今日はどこに泊まるんだ?」
回想シーンを展開していた頭に不意に親父さんの声が響いてきて、脳がニュージーランドでヒッチハイク中だったことを思い出す。
特に決まっていないと伝えると、親父さんは「じゃあ泊まっていけよ」と言ってくれた。
漁師である親父さんの家は海のそばの一軒家。
意外だったのはマオリである親父さんの奥さんが白人さんだったこと。
そして夕食に刺身が出てきたこと。
しかも山葵と箸まである。
聞けば親戚(?)に日本人と結婚した人がいるらしい。
なるほど、自分を歓迎してくれるのも日本人だからかもしれない。
刺身とさらにステーキまで焼いてくれて予想もしなかった豪勢な食事。
量もハンパなく、エネルギーは摂れる所で摂れるだけとる主義の自分でも食べきることができなかった。
でぶや(注 - 元祖!でぶや、テレビ東京系列)から3年契約のオファーが来そうなくらいの勢いでパンパンに張った腹をかかえ、用意してくれたベッドに潜り込む。
何でも明日はいろいろと案内してくれるらしい。
楽しみだ。
世界一イカツいパブで(後編)に続く...
ニュージーランドは南半球、オーストラリアの東およそ2,000kmの位置にあり、面積は日本の約3/4程の自然豊かな島国だ。
北島、南島という2つの主要な島と、その他いくつもの島々から成っている。
北島北部にある同国最大の都市オークランド。
そこからさらに北西に伸びる、長い半島を先端に向かって進んでいた。
しばらく北に行ったところで子供連れのおばさんの車に乗せてもらった。
褐色の肌に丸い鼻、そして骨太の体型。18世紀にイギリスを始めとするヨーロッパからの入植者たちが来る以前よりこの地の住人である先住民族マオリ族の特徴だ。
おばさんはとてもフレンドリーな人で「急いでなければお茶を飲みにおいで」と言って家に招いてくれた。
おばさんの家へ行く道すがら、見かけるのはマオリの人ばかり。
どうやらこの辺りは白人はあまり住んでいないようだ。
家に着くと家族を紹介され、皆と一緒にティータイム。
どこから来て何の為に旅しているのかなど、興味深そうに尋ねる子供たちと短いけれど楽しいひと時を過ごす。
お礼を言っておばさんの家を後にし、次の車を待っていると、すぐに今度は2人組みの男性が停まってくれた。
車内で話すうちに彼らは親子だということがわかったが、雰囲気はツレっぽかったし、最初は歳もそんなに違わないのかと思っていた。
普段、童顔な日本人ばかり見慣れていると、外人さんは基本的に実年齢よりも少し、時にはかなり年上に見える。
そんな実例を1つ。
これは南米にいた時の出来事なんだけど、その時自分はメールをチェックしたくてネットカフェに来ていた。
順番待ちの最中、時刻が知りたくなって隣に座っていた立派な鏡餅のような体型の人に尋ねてみた。
太い手首に巻かれた時計を指差して快く教えてくれた彼に、「Gracias señor.(グラシアス セニョール)」と感謝の気持ちを伝える。
グラシアスは英語でいう“Thank you”で“ありがとう”の意味、“セニョール”は“ミスター”にあたる敬称だ。
一瞬、ほんの微かな変化だが、彼の表情が曇った気がした。
ん?
丁寧に礼を言ったはずなのに.....と考えるも思い当たる節は無い。
その時彼が咳をしなければ、そのまま気付かなかったかもしれない。
だが、彼は咳をした。
その身体に似合わない、小さな可愛らしい咳を。
そして自分はすべてを悟った。
彼の表情を曇らせたのは間違いなく自分のさっきの発言であり、間違っていたのはその認識と敬称。
真に付けるべき敬称は、
“セニョール”(=ミスター)ではなく“セニョリータ”(=ミス)だったということを。
そう、彼は彼ではなく、彼女だった。
その貫禄のある体型から何の疑いも無くおじさんだと思い込んでいたが、よくよく観察してみると確かに女性、それもまだ若い女の子だ。
せっかく時間を教えてくれた女の子をよりによっておっさん扱い。
本当に申し訳ない.....。
「今日はどこに泊まるんだ?」
回想シーンを展開していた頭に不意に親父さんの声が響いてきて、脳がニュージーランドでヒッチハイク中だったことを思い出す。
特に決まっていないと伝えると、親父さんは「じゃあ泊まっていけよ」と言ってくれた。
漁師である親父さんの家は海のそばの一軒家。
意外だったのはマオリである親父さんの奥さんが白人さんだったこと。
そして夕食に刺身が出てきたこと。
しかも山葵と箸まである。
聞けば親戚(?)に日本人と結婚した人がいるらしい。
なるほど、自分を歓迎してくれるのも日本人だからかもしれない。
刺身とさらにステーキまで焼いてくれて予想もしなかった豪勢な食事。
量もハンパなく、エネルギーは摂れる所で摂れるだけとる主義の自分でも食べきることができなかった。
でぶや(注 - 元祖!でぶや、テレビ東京系列)から3年契約のオファーが来そうなくらいの勢いでパンパンに張った腹をかかえ、用意してくれたベッドに潜り込む。
何でも明日はいろいろと案内してくれるらしい。
楽しみだ。
世界一イカツいパブで(後編)に続く...